Anne-Sophie Guillet アンソフィー・ギュエ (ベルギー) 2017年8月滞在
Anne-Sophie Guillet アンソフィー・ギュエは英国オックスフォードで生まれ、現在はベルギーのブリュッセルに在住するフランス人写真家です。2013年にブリュッセル王立美術アカデミーのファイン・アーツ・写真科の修士号を取得し、ベルギーの映像芸術と写真学について学びました。
彼女の作品は、2016年に神戸六甲にて開催された六甲山国際写真祭 2016を含む日本での展示ほか、米国、ベルギー、ポーランド、カナダ、オーストラリアなど様々な国々で展示されています。今年2017年4月では、個展を開催。写真シリーズ「Komorebi -木漏れ日」がブリュッセルのギャラリー「La Part du Feu」にて展示されました。
去夏、写真とビデオを組み合わせた新しい作品を制作するためスタジオ・クラで滞在制作を行い、今回が2度目の参加となります(去年のプロフィールはこちら)。滞在は言葉を超えた場所の発見や、探求し生活するための新しい時間空間の経験を関連づけ、彼女の滞在中の制作作品は、「Komorebi」と題されています。アンソフィーは周囲の自然とその音を記録し研究を追求するために、適切な映像や音、写真の機器を準備しスタジオクラに戻ってきたいという気持ちがあり今夏に実現しました。
———-写真シリーズ「Komorebi」について
「Komorebi -木漏れ日」とは、樹々や葉のあいだから漏れてさす日の光をいう。
このシリーズは、作家が2016年8月から9月にかけて福岡県糸島にある「Studio Kura」でのレジデンスプログラムに参加した際に着手し、現在も進行中のプロジェクトだ。
私たちの日常生活というのは、一年のある特定の時期における諸要素で構成され、日々のリズムを刻む。自然は湿気や温度をもって自己を表現し、傲慢なほどの力で広がり、いかなる抵抗をもものともしない。自然こそがルールを定め、その地を概観するための神秘であると示す。本来、自然にはその内面と出会えるという希望がある。
そうした出会いを写したのがこのシリーズだ。言葉にならない場の発見や新たな時空間を体験することと、その地を詳しく知り生活していくこととを、さまざまな次元で関連づける。ここで何よりも重要で大きな意味を持つのは「時」である。偏在しながら、これらの写真から浮かび上がる静寂、つまり、ひとつの考えの静寂、こうした自然を強いる静寂、作家自身の充実具合に応じて深まり、時に和らぐ孤独感の静寂を突き抜けている。
作品には人の姿はほとんどなく、自然と対峙した時の大きな孤立感や威圧感を生み出している。地平線を入れず真正面から浅い被写界深度で撮影することで、自然が仕切りや砦のようである。複雑に思えるこの作品が伝えたいのは、「不慣れな場にあっても我を見失うな」という感覚だ。とはいうものの、作家の廃材への嗜好、新しいことが始まることへの目まい、未知の世界を期待することの不安、新たな術を見出して最初に目にした時には限界を感じた場を打開していける直感など、豊かなディテールも広がっている。
この地域の地理的かつ認知的状態を結びつけることで、作家はこの見知らぬ地での旅を受け入れ、自らを環境に適応させてゆく。
文: Coline Franceschetto, 2017.
訳: Yukiko Nishikawa, 2017.
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-アンソフィー・ギュエはスタジオクラのAIRプログラム参加にあたり、Wallonia-Brussels Internationalより助成金を獲得しています。