Estelle Sweeney

Estelle Sweeney (エステル・スウィーニー)は、アナログフィルム、絵画、ドローイングを扱うフォトグラファー兼マルチメディア・アーティストです。彼女の作品は科学・夢・記憶の間(はざま)を行き来し、エネルギーと光と物質が溶け合う、静かで電気的な境界を探ります。焦点となるのは “見えるもの” ではなく、その背後に漂う不可視のヴェール──理解ではなく、そこに身を置くあなたへ空気が応答する感覚を呼び覚ますことにあります。

現在エステルが取り組むテーマは「ルシッド・ワンダリング(醒めた漂流)」。方法はきわめてシンプル――彷徨い、感じ、待つ。ドリームキャッチャーのようにカメラを使い、完璧な静と動が重なる一瞬をとらえ、言葉にならないリアルな閃光を封じ込めます。その写真はやがて “データキャッシュ” となり、残留するエネルギーの痕跡を絵具やインク、多層的な素材に変換して可視化します。こうして生まれるのは、イメージと大気が溶け合い、物質的なものと不可視のものを同時に宿す作品です。

過去2年間の継続的な旅を通じ、エステルはそれぞれの土地がもつ特有のリズムを聴き取る感性を研ぎ澄ませました。糸島の田園風景、街路、そして海岸線──それぞれが独自のチャージとバイブレーションを帯びています。彼女のプロジェクトは、その振動をなぞり取り、生きているかのようなミクストメディア作品へと翻訳する試みです。

エステルが本当に追い求めるのは、さらに大きな存在への帰属感──場所を超え、あなたが無意識のうちに共有してきた記憶やエネルギーフィールドを、作品を通して初めて知覚させる感覚です。彼女の制作はそれを固定することではなく、写真と絵画を融合させたポータルや閾(しきい)の領域を築き、静かで太古の、どこか懐かしい “家” のような感覚を観る者の内に目覚めさせる――正直で、深い安心を孕む “何か” を呼び起こすことを目指しています。

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